*こちらは「Toaru塾」で実施されている一問一答の解説部分です。興味があるひとはTwitterからDM下さい。
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*問題
Aが自己の過失により、Bの自動車を損傷させてしまった。AがBに対する貸金返還請求権を有していた場合(すでに弁済期が到来しているものとする)、Aは、貸金返還請求権を自働債権とし、上記事故により、Bに対して負う不法行為に基づく損害賠償債務を受働債権として、相殺することは許されない。
*解説
1.図を書いてみよう
まず、図を書いてみよう。
今回の問題文を図に書くと、こういう風になる。
色も意識して書いてみました。
つまり、赤色同士がリンクしていて、
・Aの行った損傷によって
・BからAに対する損害賠償請求権
が発生したイメージです。
どうでしょうか?
図を書けた人はとりあえず「脱初学者」と言って良いと思いますし、
そんな自分のことを誇りに思ってください。
2.「自働債権」と「受働債権」
まずは言葉の意味を覚えましょう。
・自働債権
➡「相殺を主張する側」が持っている債権
・受働債権
➡「相殺を主張される側」が持っている債権
今回の問題文では、
「Aは、貸金返還請求権を自働債権とし、上記事故により、Bに対して負う不法行為に基づく損害賠償債務を受働債権として」
とありますので、相殺を主張する側である「A」が持っている債権を「自働債権」といい、「B」が持っている債権を「受動債権」といいます。
逆に、「B」が相殺を主張すれば、「B」が持っている債権が「自働債権」になり、「A」が持っている債権が「受働債権」になります。
常に、「誰が相殺を主張しているのか」を意識しましょう
Point
相殺を主張しているひとが誰なのかを掴もう!
3.改正民法509条
さて、今回の問題は改正点です。
‐‐‐‐‐
改正前
(不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第509条
債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
改正後
(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第509条
次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
‐‐‐‐‐‐
改正民法のポイントは二つです。
①悪意による不法行為に基づく損害賠償債務、人の生命・身体の侵害に基づく損害賠償債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない
②債権者が、その債務に係る債権の他人から譲り受けた場合は、相殺できる
この2つを覚えましょう。
ここから出てくる影響は下記の2点を覚えよう。
①過失による不法行為債権を受働債権とする相殺が可能になる
②生命・身体の侵害に基づく損害賠償請求権を受働債権とする場合は、債務不履行による債権であっても、相殺することはできなくなる
今回の問題文は、「Aが自己の過失により」とあるので、相殺することはできます。
*答え
妥当でない
*課題(こちらの解説はコンサル生限定配布します)
①現行民法で、債務が不法行為によって生じた場合に、債務者側からの相殺が禁止されている理由はなぜか
➡???
②改正民法では、「Aが自己の過失により、Bの自動車を損傷させてしまった」との部分が、「Aが自己の過失により、Bにけがをさせてしまった」となれば、結論は変わるか?
➡???
③改正民法では、「Aが自己の過失により、Bの自動車を損傷させてしまった」との部分が、「Aが故意に、Bにけがをさせてしまった」となれば、結論は変わるか?
(故意=わざと)
➡???
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