平成25年問29 選択肢2 民法⑫ 同時履行の抗弁権
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*問題
Aが自己所有の事務機器甲(以下、「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。
*解説
1.図を書いてみよう!
では、この問題についても図を書いてみましょう。
どうでしょうか。
図を書くことを何度も何度もできるまで練習をして、
問題文を丁寧に反映した図を書けるようにしましょう。
2.問題の所在
(1)問題は何を聞いてるか
まず、問題文が一体何を聞いているのか噛み砕いていきましょう。
・前半
CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき
➡そもそも「C」に所有権ってあるのかな?
・後半
Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。
➡同時履行の抗弁権は「C」に対しても主張できるの?
このふたつですね。
こういう風に問題文が何を聞いているのかは慣れですので、
沢山の問題を何度も解いていきましょう。
では、このふたつを考えていきましょう。
3.解説
(1)前半について
まず、前半については、妥当です。
Cには所有権があります。
なぜなら、問題文には「BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった」とあります。
つまり、BC間では、甲について売買契約が成立しています。
これについて条文では、
民法第176条(物権の設定及び移転)
物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
とあります。
これが何を言っているかと言うと、
所有権は契約があったら移動するよ
っていう意味です。
BC間では売買契約があるので、所有権はCに移動しています。
ということで、前半は正しいですね。
(2)後半について
次に、後半ですが、これは間違っていますね。
なぜなら、同時履行の抗弁権は「債権的な権利」なので当事者にしか主張できないため、AB間の売買契約とは直接的には関係ない「C」に主張することは出来ないからですね。
これを詳しく説明します。
(2-1)同時履行の抗弁権
まず、同時履行の抗弁権というものがあります。
これは何かというと、簡単に言うと、
「そっちが金払わないなら、物を渡さないぞ!」
って言える権利です。
例えば、AB間で売買契約をした場合、
・Aは「物」を渡す
・Bは「金」を払う
という風に、二人はお互いに義務を負担し合いますね。
この義務は、お互いが「先に履行する」とかなくて、
ちゃんと「一緒に履行しましょうね」ってルールがあります。
それを「同時履行の抗弁権」と言います。
(2-2)今回は?
それで、今回の問題文では、
AB間では「同時履行の抗弁権」を主張できますね。
「Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないとき」とあるので、
もしBから「物を渡せ!」と言われても同時履行の抗弁権を主張して、
「いやいや、逆にちゃんとお金払ってよ!」と言うことができます。
つまり、物を渡さないことが正当化されます。
(つまり、「債務不履行」にならないんです。
ただ、ここは結構難しいのでスルーで大丈夫ですよ。)
(2-3)Cにも言えるの?
で、今回は何を聞いてるのかと言うと
さっき説明した「同時履行の抗弁権」って、
契約の当事者の「B」だけではなくて「C」にも主張できるの?
ってのが今回の問題ですね。
これの答えは、
Cには主張できません!
です。
同時履行の抗弁権は「債権」の話なので、それは当事者にしか主張できませんね。
ここが「留置権」との違いです。
留置権は「物権」なので、AB間で成立すれば、それを「C」にも主張できるのです。
この感覚を徐々に掴んでください。
*答え
妥当でない
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→ https://youtu.be/PxHtOHsWIT8
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