平成23年問31 選択肢1 民法⑯ 連帯債務
*こちらは「Toaru塾」で実施されている一問一答の解説部分です。興味があるひとはTwitterからDM下さい。
➡ https://twitter.com/toaru_jukukoshi
*問題
連帯債務および連帯保証に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
連帯債務において、連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合には、その連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者は相殺を援用することができる。これに対し、連帯保証において、主たる債務者が債権者に対して債権を有する場合には、連帯保証人は、主たる債務者が債権者に対して有する債権による相殺をもって、相殺適状にあった全額について債権者に対抗することができる。
(出題当時の原文ママ記載しています)
*解説
*1 民法改正により上記問題は破綻しました。そこで今回の解説では、問題についての解説ではなく、上記に関係する民法改正点の説明に留めます。なお、出題された当時は上記選択肢は「妥当」でした。
*2 こちらは民法改正前に合格した行政書士試験講師により作成されたものです。精一杯調べたうえ作成しましたが、間違っている点があればTwiitterのDMで教えてください。
1.連帯債務と連帯保証
まず、「連帯債務」と「連帯保証」の区別ですが、「付従性」です。
「付従性」とは、被担保物権が成立しないと、 担保物権も成立せず、被担保債権が消滅すると担保物権も消滅する性質です。
簡単にいうと、「にこいち」って感じです。
連帯保証では、主債務があるからこそ保証債務が存在しているので、例えば、主債務が消滅すれば、それに伴って、保証債務を消滅します。
一方で、連帯債務では、債務者同士には、上も下もありません。だから、ひとりに対して時効や相殺があっても、基本的には他の人に影響はしません。
絶対効や相対効の話を理解している方が多いと思います。
そこが今回大幅に改正されたので、この問題自体もう解答することができません。
いずれにせよ、2つの制度の違いは「付従性」だと理解して置いてください。(他にもいろいろありますが…)
2.連帯債務・連帯保証と相殺
(1)連帯債務の法改正
そして、「連帯債務と相殺」については、この民法改正で大幅に改正されました。
こちらを見て欲しい。
‐‐‐‐‐‐
436条改正
民法第436条の規律を次のように改めるものとする。
ア 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。(民法第436条第1項と同文)
イ アの債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度で、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
‐‐‐‐‐‐
連帯債務者の中で債権者に対して、連帯債務関係とは別件で債権を有していた場合、現行民法では、
①本人が相殺
②本人以外が相殺
の2つの場合が想定されていました。
さて。
②には違和感がありました。
「他人の債権を使って相殺していいの?」って感覚のある方も多いと思います。
現行民法では、「前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。 」として、「負担部分についてのみ」他人の債権を使って相殺をするようなことが認められていました。
ただ、それを認めるなら、「負担部分の限度で履行を拒絶する権利」を与えたほうが早くない?って意識があったようです。やっぱり、債権は当事者だけが使えるってほうが「債権」の理解にも合うよね。
ということで、今回の民法改正で、「その連帯債務者の負担部分の限度で、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。」となったのです。
ここをよく理解しておきましょう!
(2)じゃあ連帯保証は?
では、「連帯保証」の場合はどうなるのでしょうか。
現行民法では、458条が連帯債務の規定を準用するという運用がされていました。
新民法でも、この準用の流れは変わりませんが、連帯債務関連の法改正を踏まえて、やや改正されました。
‐‐‐‐‐
458条 改正案
民法第458条の規律を次のように改めるものとする。
民法第435条、第436条第1項、第438条及び第17の2(4)の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由に関して準用する。
‐‐‐‐‐
このように、「更改・相殺・混同」については、連帯債務と同様に「絶対効」とする運用が取られる予定です。
最低限、ここだけ理解しておきましょう。
*答え
(妥当である)
質問あればツイッターまでよろしくお願いします!