平成23年問30 選択肢1 民法29 法定地上権
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*問題
法定地上権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
Aが自己所有の土地と建物に共同抵当権を設定した後、建物が滅失したため、新たに建物を再築した場合において、Aが抵当権の被担保債権について弁済することができなかったので、土地についての抵当権が実行され、その土地は買受人Bが取得した。この場合、再築の時点での土地の抵当権が再築建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事由のない限り、再築建物のために法定地上権は成立しない。
*解説
1.知識を整理
(1)判旨
まずこの問題を解くために必要な知識を整理しましょう。
最判平成9年2月14日----
所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、
右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、
①新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、
かつ
②新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、
新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。
ーーーー
そしてこの理由についてはこうです。
「 建物が取り壊されたときは土地について法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが、抵当権設定当事者の合理的意思であり、抵当権が設定されない新建物のために法定地上権の成立を認めるとすれば、抵当権者は、当初は土地全体の価値を把握していたのに、その担保価値が法定地上権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限定されることになって、不測の損害を被る結果になり、抵当権設定当事者の合理的な意思に反するからである。」
ここを噛み砕いて説明します。
(2)判例の結論
判例がいいたいことをまとめます。
・土地、建物の両方に抵当権を設定する
↓
・建物が取り壊される
↓
・新しく建物を建てる
↓
・原則として、建物について法定地上権は成立しない
↓
・例外的に、
①新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、
(=土地も建物も同じ人がもっていること)
かつ、
②新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき
(=土地に抵当権つけてるひとが新しい建物にも抵当権を付けてもらったこと)
の場合には法定地上権が成立する
この流れで理解しましょう!
(3)理由
では、判例が
このように考えている理由を理解しましょう。
建物が壊されるということは
抵当権者は
「やった!建物ない土地やん!嬉しい!」
という風に土地の「担保価値(=売ったらいくらになるかな的な)」を「更地」として考えます。
基本的には、
①土地に建物がたっている
②土地に建物がたっていない(=更地)
の場合、②の方が遥かに担保価値が高いです。
やはり、建物がたっていない方が、
例えば住居を立てたり、飲食店を立てたり、
色んなことをする可能性を秘めています。
そのため更地の方が価値があります。
建物が壊された場合には
土地の担保価値は「更地」と考えるのが通常だと判例は言っています。
だからこそ、判例は、
原則として法定地上権は成立しないと考えています。
ただ、民法には原則があれば
例外もあります。
今回の場合は、先ほど示した①②の場合には
例外的に法定地上権が成立するとして
バランスをとっている感じですね。
こういう風に
判例を理解しておいてください!
*答え
妥当である
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