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行政法記述(平成23年(2011年)問-44

 

 

平成23年記述式 行政法

 

以下に引用する消防法29条1項による消防吏員・ 消防団員の活動(「破壊消防」と呼ばれることがある)は、 行政法学上のある行為形式(行為類型) に属するものと解されている。その行為形式は、 どのような名称で呼ばれ、 どのような内容のものと説明されているか。 40字程度で記述しなさい。

 

消防法29条1項
消防吏員又は消防団員は、 消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために必要があるときは 、火災が発生せんとし、 又は発生した消防対象物及びこれらのものの在る土地を使用し、 処分し又はその使用を制限することができる。

 

 

この問題、消防法29条の条文が出てきたり、 問題文中にあるフレーズ『行政法学』、または『行為形式、 行為類型』 を見て難しいと思われた方も若干名おられると思います。 しかしこの問題の答えが分かれば『あのことだったんだ!』 と感じられる方が圧倒的多数を占めると思います。

 

(1)最初にやることは、問題(問われていること) を正確に把握すること。今回問われているのは(a)と(b) の2点。

 

(a)消防法29条の条文に書かれている消防吏員、 消防団員の活動を行政法学上の行為形式で、 何という名称で呼ばれているか?


(b) 上記(a)について、どのような内容のものと説明されているか?


(2)そして記述の文章構成も前述(1)から、 以下の通り見えてくると思います。‭私の個人意見ですが、 記述で回答する際の文章構成は『問われている順に解答する、 ベタに解答する』が最も無難ではないかと思います。

 

(1-aの解答)と呼ばれ、(1-bの内容)とされる。( または、(1-aの解答)と呼ばれ、(1-bの内容)。)

 

(3)次に解答するための知識を整理したいと思います。

 

(3-a)先ず行政法学、 これは前回私が流した解説にも書きましたが、 ざくっと簡単に言えば『行書試験の行政法に出てくる法律のこと』 です。参考書等には、『 行政機関が行う一切の作用を対象とするもの』 と解説されています。

 

(3-b)次に行政法の体系について敢えて触れます。 行政法といっても法律の数は非常に多いです。 それらの法律をまとめると、【行政組織法】、【行政作用法】、 そして【行政救済法】の3つに分けられます。
初めて勉強される方の中には、 内容が複雑過ぎて苦戦されている方も多いと思います。 以下の通り体系的に理解しておけば、 個々の法律の存在意義が見えてくるのではないでしょうか。
(補足)地方自治法もあるので、 厳密にいえば行政法は4つに分けられます。

行政組織法(誰が行うか)
⇒行政庁の誰が行うか?の組織について定めている(行政主体)。 主な法律は国家行政組織法

行政作用法(どんな行為をするか)
⇒行政主体が国民に対して行う、具体的な行為(行政行為) を定めたもの。主な法律は、行政代執行法、行政手続法。

行政救済法(その行為に間違えがあった場合の救済方法)
⇒違法な行政行為があった場合、国民を救済する方法、 等を定めたもの。主な法律は、行政不服審査法、行政事件訴訟法、 国家賠償法

 

(3-c)今回問題文で問われているのは『 行政法学上の行為形式』、 これは上記3つの中のどれに当てはまるか?答えは【行政作用法】 です。行政作用法は次の項目で構成されています。(この体系、( 1)~(10)は覚えた方がいいと思います)

(1)行政立法(法規命令と行政規則)
(2)行政計画(拘束的計画と非拘束的計画、 行政計画と損害賠償)
(3)行政契約
(4)行政調査
(5)行政行為(法律行為的行政行為、準法律行為的行政行為、 裁量、附款、行政行為の効力、瑕疵
(6)行政上の強制執行(代執行、強制徴収、直接強制、 砂防法のみある執行罰)
(7)即時強制
(8)行政手続(行政指導、届出、意見公募手続)
(9)行政手続(申請に対する処分、不利益処分)
(10)行政情報公開

 

(3-d)問題文にある消防法29条に「 消防吏員又は消防団員は、 消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために必要があるときは (カット)土地を使用し、 処分し又はその使用を制限することができる。」
つまり目前に迫った火災という障害を取り除くため、 相手方に義務を命じることなく、いきなりその土地を使用し、 処分し制限出来る。これを即時強制といいます。

強制執行にある直接強制と思われた方、実は間違いです。 強制執行の直接強制とは【 行政が私人に命令した義務が不履行であること】 を前提として行われます。
これに対し即時強制は、行政が国民に対し【これをしなさい】 という義務の命令を前提としなくても、 国民の身体や財産に直接実力を行使する権限です。 直接強制と即時強制は異なります。

 

(4) 以上、から解答の記述文章は次の通りになります。

 

(解答例1)即時強制と呼ばれ、義務の不履行を前提とせず、 国民の身体や財産に直接実力を行使すること。(43字)


(解答例2)即時強制と呼ばれ、義務を命じる余裕がない場合に、 直接国民の身体や財産に実力を加えること。(44字)

 

(補足)行政組織法の体系は次の通りです。(1)から(5) を覚えておくだけで、体系的な理解が進むと思います。

(1)行政主体(国、地方公共団体、その他の行政主体)
(2)国の行政組織(内閣、内閣の統制下にある行政組織)
(3)公物(自然公物、人工公物、公物の管理権、 公物の時効取得)
(4)行政機関(行政庁、諮問機関、法的に拘束する参与機関、 監査機関、警察官等の執行機関、補助機関)
(5)行政庁の権限、委任、代理、裁決

ついでに、行政救済法も体系を調べました。

(1)行政不服審査(不服申立による救済)
(2)審査請求に対する審理手続の流れ(手続の開始と進行、 執行停止、審理手続の終結(行政不服審査会)、裁決)
(3)裁判による救済(主観訴訟(抗告訴訟と当事者訴訟)、 客観訴訟(民衆訴訟と機関訴訟)
(4)取消訴訟(訴訟要件、等)
(5)取消訴訟の審理手続(判決種類、執行停止、効力)
(6)その他の抗告訴訟・民衆訴訟と機関訴訟(無効等確認、 不作為違法確認、義務付け、差止、等)
(7)国家補償(国家賠償、損失補償)

本日の行政法解説は以上です。続いて民法に移ります